薄明薄暮帳

うさぎの生態について書きます

アイドル

大阪の小さなライブハウスで1人のアイドルに出会った時に、「彼女はアイドルだ」と思った。何を言っているのか分からないかもしれないが、私は確かにそう思った。足を小刻みに動かし、音に合わせて左右に揺れ、マイクを持ちながら口角を上げたり目を細めたりする彼女は、偶像として生きようとしていた。確かに、アイドルだった。私は彼女を心底恐ろしく感じていた。そもそも、3次元の人間を崇拝対象として絶対視することは、私にとって恐ろしいことだ。歪な押しつけはいずれ確実に破綻を招き、人が傷つく。人は誰かの盲目の対象になるべきでは無い。誰かを盲目に見つめるべきではない。たかだか10代の女の子は、そのあまりにも重い枷を背負い、背筋を伸ばして立ち向かっていた。気味が悪く、恐ろしく、感情への冒涜ですらあると思ったが、とても美しかった。