薄明薄暮帳

うさぎの生態について書きます

あえかな東京

渋谷のスクランブルスクエアに登った。1月の東京はまあまあ寒くて、46階はまあまあ高くて、なかなかどうして非日常的で怖かった。そもそも高所恐怖症なので足の震えが止まらなかったというのもあるが、それはさておき。吹き荒ぶ冷風と戯れながら下界(というと尊大だが)を見下ろして、「多分今目の前で人間が鉄骨に押しつぶされても特になんの感慨も湧かないだろうなあ」と思った。厨二病的発想だと思う人は是非渋谷のスクランブルスクエアに登ってみてほしい。外国人観光客とカップルに挟まれながら肩身狭く登った結果、本気でそう思うはずだから。なんだろう、物理的に遠いと割と何でもどうでも良くなっちゃうんだろうね。その感覚が妙に新鮮に怖かった。同じ目線にあるクレーン車は「わあこんなに高いところにあって、足場はどうやって組んだんだろう」なんて親身になって考えられるけど、夜のスクランブル交差点をうごうごと歩く人間達は、どうにも無機質で、シムシティのシステム以外の何物でもなかった。飛行機の墜落事故とかはあんなに恐ろしいのに、豆粒の人間を直で見ると感傷も無くなるんだなあ。眼前に広がる東京は私が思うよりもずっと広くて、電気の絨毯は人間の愚かさを、豆粒は人間の醜さを、そのまま象徴していて、気持ち悪かった。登ってよかった、スクランブルスクエア。大きくなってしまうと足元はどうしても見えなくなるものなんだな。私がウルトラマンだったら、絶対に地球人は助けられない。